「はあ~また朝から子供にキレてしまった。」
「さっきから何度も起こしてるのに全然起きてこない。」
「こんなに起きられないなんて、もしかして病気?」
子供が朝起きられなくて学校を休んだり遅刻したりするのを見ていると、親の方もどうしてあげたらいいのか悩んでしまいますよね。
実は子供が朝起きられないのは病気が原因になっている可能性があるんです。
今回は、朝起きられない子供の2つの隠された病気について解説します。
朝起きられない子供の2つの隠された病気
朝起きられない子供って周りから「怠け者」とか「夜ふかししてるからでしょ」と思われてしまいがちです。
親もそんな子供を起こすのに一苦労。
ついイライラして子供に当たってしまうこともあるのではないでしょうか。
朝起きられなくて学校を休んだり遅刻したりしている中学生に話を聞いてみると
「好きな部活をしたり友達と遊べるから学校は楽しい」とか
「学校に行きたくないわけじゃない」という答えが返ってきます。
それなのに朝、目が覚めると体の具合が悪くて起き上がれず学校にいけないと言います。
決してずる休みしているわけではないのに親や先生、友達からは「サボってる」と思われ辛い気持ちを抱えている子供も多いんですよ。
その背後には何らかの病気が隠されている可能性があるんです!
朝起きられないという症状が現れる病気を2つ紹介します。
1:起立性調節障害(OD)
起立性調節障害とは
起立性調節障害は自律神経失調症の一種で、小学校高学年~中学生の子供がなりやすい病気です。
自律神経の働きが悪くなり朝起きた時に脳や体への血流が低下して起きられなくなります。
午前中は体調が悪く、午後になると回復する傾向が強いので「ホントに病気なの?」と誤解されることもあります。
症状
次のような症状がある子供は起立性調節障害の可能性があるかもしれません。
- 朝起きられない
- 夜は寝つきが悪い
- めまい・立ちくらみ
- 動悸・息切れ
- 体がだるく疲れやすい
- 食欲がない
- ずっと立っていると気分が悪くなる
- イライラしたり集中力がなくなる
- 嫌なことを見たり聞いたりすると気分が悪くなる
- 頭痛・腹痛・吐き気
- 顔色が青白い
- 乗り物に酔いやすい
原因
この病気の原因は自律神経の乱れやストレスなどです。
心と体の機能を調節する自律神経には、交感神経と副交感神経という2つの種類があります。

健康な子供は朝起きると交感神経のスイッチが入って活動できるようになり、夜になると副交感神経のスイッチが入り眠れるようになります。
ところが、この2つの神経のバランスがくずれると、朝目が覚めても交感神経のスイッチが入らず起きれなくなってしまいます。
そして、夜は交感神経から副交感神経に切り替わらず、寝つけなくなってしまうんです。
どのぐらいの確率でなるのか
日本小児心身医学会の発表によると
軽症例を含めると、小学生の約5%、中学生の約10%。重症は約1%。不登校の約3-4割にODを併存する。
男:女 1:1.5~2
参考:日本小児心身医学会
という統計が出ています。
全国の中学生の数は約350万人ですので、中学生の10人に1人は起立性調節障害の疑いがあることになります。
どんな子供がなりやすいのか
起立性調節障害は心の病気とも言われているので元気で活発な子供より、おとなしく悩みやすい子供がなりやすい傾向にあります。
- 食が細くやせている子
- 体力がない子
- アレルギー体質の子
- 風邪をひきやすい子
- 皮膚や粘膜が弱い子
- 内向的で繊細な子
- 周囲に気を使う優しい子
- 生真面目な子
- 聞き分けの良い子
- 自己主張が苦手な子
- 人の目を気にする子
- 回りの空気を読み過ぎる子
- 集団生活が苦手な子
治療・直し方
起立性調節障害の治療法ですが、薬には副作用があるものも多いので子供に飲ませるのは少し心配ですよね。
薬での治療以外にも自律神経を整える方法は色々あるんですよ。
- 朝起きる時は頭を下げながらゆっくり起きる
- 夜寝る時間と朝起きる時間を少しずつ早める
- 水分を摂取する(1日1,5ℓ~2ℓ)
- 塩分を摂取する(1日10~12g)
- 長時間立ち続けない
- 立ち上がる時はゆっくり立ち上がる
- 温度の高い所は避ける
- 昼間はなるべく横にならないようにする
- バランスのとれた食生活を心がける
- 心理的なストレスを減らせるよう環境を整える
- 毎日15分~30分運動する
交感神経を刺激して血圧を上げる薬
・ミドドリン塩酸塩(メトリジン)
・メチル硫酸アメジニウム(リズミック)
心拍数を下げて血管を収縮させる薬
・プロプラノロール(インデラル)
睡眠相後退症候群(DSPS)
睡眠相後退症候群とは
睡眠相後退症候群は思春期~青年期に発症することが多く、夜ふかしを続けたことなどがきっかけで睡眠のリズムにズレが生じていく睡眠障害です。
夜なかなか寝つけないため朝起きられず、仕事や学校に行けなくなって日常生活に支障をきたしてしまいます。
症状
こんな症状があったら睡眠相後退症候群かもしれません。
- 本来寝る時間(10時~1時頃)に寝つけない
- 朝起きられず会社や学校に行けない・遅刻する
- 朝無理して起きたとしても眠気・頭痛・倦怠感などが続く
原因
睡眠のリズムがズレることで、体温・ホルモンのリズムも3~4時間ずつ遅れていくことが原因です。
- 慢性的な夜更かし
- 夜遅くまでパソコンやスマホの画面を見ている
- 昼夜の生活が逆転する
- 試験勉強で夜遅くまで起きている
- ストレスや過労による体内時計の乱れ
どんな子供がなりやすいのか
慢性的な夜更かしが原因なので、次のような子供は発症しやすいといえるでしょう。
- 徹夜や夜更かしが多い子
- 夜遅くまで勉強している子
- 夜遅くまでテレビやスマホを見ている子
- 親から「早く寝なさい」という干渉を受けない子
治療・直し方
睡眠相後退症候群は体内時計のリズムが遅れることが原因なので、睡眠薬などの薬を使ってもなかなか改善できません。
主な治療方法を紹介します。
起床時間と就寝時間を遅らせていく
毎日、起きる時間と寝る時間を3時間ずつ遅らせていき、起きたい時間に起きれるようになったらその状態を定着させる方法です。
メラニンが分泌される時間を調節する
メラニンは睡眠ホルモンと呼ばれる物質で、寝つきを良くしたり体内時計のリズムを調整したりします。
睡眠相後退症候群の人は普通の人よりもメラトニンが分泌されるタイミングが遅いので、サプリで摂取して体内時計のリズムを早めます。
高照度光療法
専門の照明器具を使って午前中に2000~2500ルクスの光を1~2時間くらい正面から浴びます。
眠気を誘うメラトニンの分泌を抑えて睡眠から覚醒に切り替わりやすくします。
病気以外で朝起きられない原因は?
子どもが朝起きられないのは「怠けているから」というわけではなく、起立性調節障害や睡眠相後退症候群などの病気が原因になっている可能性があることが分かりました。
でも、これらの病気以外のものが原因になっていることもあります。
睡眠不足
睡眠不足になると疲れが取れず、当然のことながら朝も起きられませんよね。
低血圧
低血圧の子供は心臓から全身に送り出される血液の流れが遅いので、目覚めるのに時間がかかってしまいます。
世界保健機関(WHO)では最高血圧が100mmHg以下、最低血圧が60mmHg以下の状態を低血圧と定めているので、朝起きたらまず血圧を測ってみましょう。
低体温
平均体温が36℃未満の人は低体温といわれています。体温が下がると眠りやすくなり体温が上がると起きやすくなるので、低体温の人は朝起きにくくなってしまうのです。
鉄分が不足している
鉄分には酸素を全身に運ぶ働きがあるため、鉄分が不足すると酸素が全身に行き渡らず、朝起きた時にめまいがして起きられないことがあります。
ストレス
勉強や友人関係などでストレスを受けるとアドレナリンという物質が分泌され、眠れなくなったり眠りが浅くなったりして朝起きられなくなります。
平日と休みの日は起きる時間が違う
学校に行く日と休みの日とでは起きる時間が違う・・・なんてことありませんか?起きる時間が違うと睡眠のリズムが狂ってしまうので、なるべく同じ時間に起きるようにしましょう。
寝る前に食事したり間食を食べたりする
寝る前に食事したり間食を食べたりすると、食べ物の消化にエネルギーを使ってしまい疲労の回復に充分なエネルギーを使えなくなるので睡眠の質が下がってしまいます。
夜遅くまでパソコンやスマホを見ている
パソコンやスマホの画面を見ていると脳が刺激され、眠れなくなることがあります。
夜は寝る準備をするためのリラックスタイムを作りましょう。
自宅のケアやグッズの紹介。変化がなければ病院へ
中学生くらいの子供って、先生や親の言うことを素直に聞かなくなったり、親の思い通りにはいかなくなってきますよね。
そんな難しい年頃の子供でも、朝起きられないのは相当苦しいはず。
少しでも起きやすくなるように自宅でできるケアやグッズを紹介します。
色々試してみても効果がないようなら病院で診察を受けましょう。
朝の起こし方
朝子供を起こす時は、怒鳴りつけたり無理やり叩き起こすのはNGです。
それでなくても反抗期真っ只中の思春期の子供は親の言動に敏感に反応して、逆ギレしてくるかもしれませんよ。
命令口調ではなく「〇時だよ~起きてね~」という風にやわらかい口調で声をかけ、自分から起きられるようにサポートしてあげて下さいね。
朝できること
朝起きるのは大なり小なり誰でも辛いもの。
スッキリ起きられるようにするために自宅でできることを紹介します。
- 好きな音楽をかけて耳から刺激を与える
- 起きる時間の10分前からカーテンを開けて朝の光を入れる
- 電気をつけて部屋の中を明るくする
- 冷たい水・柑橘系のジュースを飲ませる
- 朝ご飯は子供の好きなメニューにする
- スマホやゲームなど、好きなことをしてもいい時間を作る
夜寝る前にできること
体は疲れていても神経が高ぶって眠れない・・・なんて経験ありますよね。
心と体がリラックスできなければ疲れていてもなかなか眠れません。
夜寝る前にできることを紹介します。
- 寝室の照明は暗くして眠りに入りやすい環境を作る
- 夕ご飯は寝る3時間前には済ませておく
- お風呂の温度は39~40℃、寝る1~2時間前に入浴する
- 家族全体で「夜寝る1時間前はパソコンやスマホを見ない」というルールを作る。
- ヨガやストレッチを一緒にする
- アロマ精油を数滴たらしたハンカチを枕元に置いておく
- ゆったりした音楽を聴く
病気かもと思ったらどの病院の何科に行くの?
「うちの子、もしかして病気かも・・・」
「でも、どの病院に行ったらいいの?」
病院に連れて行こうと思っても、何科を受診すればいいのか迷ってしまいますよね。
どの病院の何科に行けばいいのか解説します。
起立性調節障害
小・中学生の起立性調節障害は基本的に小児科を受診しますが今は起立性調節障害専門のクリニックもあるので、インターネットで病名と地域で検索すると病院を探せます。
総合病院の小児科は待ち時間が長いこともあるので、かかりつけの小児科がある人はそちらに行った方が待ち時間が少なく体力的にも楽かもしれませんね。
大人の場合は精神科や心療内科を受診しましょう。
睡眠相後退症候群
睡眠相後退症候群の原因がストレスだとハッキリ分かっている場合は精神科や心療内科を受診してもいいですが、一番良いのは睡眠障害の専門病院や睡眠クリニックを受診することです。
日本睡眠学会のホームページには睡眠医療認定医リストが載っているので、一番近い病院に勤務する医師を探してみて下さいね。
睡眠医療認定医は都市に集中しているため、地域によってはいないこともありますが、その場合は総合病院の睡眠外来を受診しましょう。
まとめ
起立性調節障害や睡眠相後退症候群は以前に比べると多くの人に知られるになってきましたが、まだまだ理解していない人も多いです。
これらの病気が原因で朝起きられない子供は親や先生から「早く起きて学校に行きなさい」とか「休んじゃダメでしょ」なんて言われながら辛く苦しい毎日を送っています。
でも、これらの病気は自分の力ではどうすることもできないんです。まずそのことを周りにいる人が理解してあげましょう。
朝起きられなくて不登校になるのではないかと心配するあまり、ついキツく叱ってしまいがちですが、子供が自分から起きて学校に行けるようになるまで温かく見守ってあげて下さいね。